政府が毎年策定する「骨太の方針」は、日本の中長期的な経済・財政運営の方向性を示す重要な政策文書である。実はこの方針には、今後成長が期待される産業や国が後押しする分野が色濃く反映されており、株式投資においても見逃せない材料となっている。
本記事では、骨太の方針に関連して注目される株式銘柄を10社厳選し、
「なぜその企業が政策テーマと結びつくのか」「どの分野が追い風になるのか」を投資初心者にも分かりやすく解説する。
政策動向をヒントに、日本株の新たな投資チャンスを探したい方は、ぜひ参考にしてほしい。
骨太の方針とは?投資家が注目すべき理由

「骨太の方針」とは、政府が毎年策定する経済財政運営と改革の基本方針であり、日本の中長期的な政策の方向性を示す重要な文書である。予算編成や成長戦略の土台となるため、単なる理念ではなく、実際の財政支出や制度設計に直結する点が特徴だ。
投資の観点から注目すべき理由は、この方針の中に国が重点的に資源を投下する分野=成長が期待される政策テーマが明確に示される点にある。たとえば、近年ではAI・半導体、防衛力強化、GX(脱炭素)、DX、社会インフラ整備などが繰り返し強調されてきた。これらの分野では、補助金、税制優遇、規制緩和といった形で企業活動が後押しされやすく、関連企業の業績や市場評価に中長期的な影響を与えやすい。
つまり、骨太の方針を読み解くことは、短期的な材料ではなく「国策として追い風が吹く分野」を見極める作業とも言える。本記事では、こうした政策テーマを軸に、骨太の方針と関係の深い上場企業を厳選し、なぜ注目されるのかをわかりやすく解説していく。
ソフトバンクグループ(SoftBank Group)(9984)

ソフトバンクグループは、通信事業に加えて多数のグローバル投資を行う持株会社で、AIやデジタルインフラ、新興テクノロジーへの投資を主軸としています。AI関連企業や半導体、IoT・データセンター関連の成長テーマを内包し、政府のDX(デジタル・トランスフォーメーション)やAI戦略の恩恵を受けやすいポジションにあります。政策面でAI・半導体/デジタル投資が強調されれば、関連事業価値の再評価余地が大きく、長期成長株としての評価につながる可能性があります。
AI・半導体の国策推進:政府が掲げる「AI・半導体への大規模投資支援」政策において中核的存在。フィジカルAI、ロボット分野への巨額投資を通じて日本の半導体・AI産業の競争力強化に貢献。経産省の1兆円規模のフィジカルAI支援構想にも参画。
東京エレクトロン(Tokyo Electron)(8035)

東京エレクトロンは半導体製造装置の国内最大手で、世界シェアも高い企業です。AI・半導体産業への政策投資が重要視される中、製造装置は半導体投資サイクルの中心を担います。政府がAI・半導体分野に補助金や税制支援策を講じるほど、設備投資需要は上向きやすく、同社の売上拡大や利益改善につながる可能性があります。設備投資サイクルの波に乗る中長期成長株として投資妙味が評価されやすい点が魅力です。
半導体製造装置の国産化推進:経済安全保障の観点から重要性が高まる半導体製造装置分野で、世界トップクラスのシェアと技術力を保有。生成AI需要拡大に伴う半導体増産を装置面から支え、国内半導体産業の自立化に貢献。
アドバンテスト(Advantest)(6857)

アドバンテストは半導体検査装置の世界的リーダーで、先端プロセス向けテスト市場で強い競争力を有します。AI・5G・高性能コンピューティング需要の拡大に伴い、テスト装置需要も増加すると期待され、政策で半導体自給・先端化が推進される局面では恩恵を受けやすいポジションです。政策支援が企業業績と市場評価に好影響を与え、中長期の成長ドライバーになり得る銘柄として注目されます。
AI半導体サプライチェーンの要:政府のAI産業育成政策において、半導体の品質保証という重要な役割を担う。特にAI用の高性能GPU・HBMメモリの検査で独占的地位を確立。日本の半導体エコシステム強化に必須の企業。
レーザーテック(Lasertec)(6920)

レーザーテックは半導体製造向けの検査・計測機器を手がける企業で、グローバル競争力が高いとされます。精密機器市場はAI・最先端チップ需要に直結し、政府のテクノロジー戦略が後押しするテーマ株の一角です。先端技術に強く、設備投資波動にも乗りやすいことから、政策的支援が続く局面では株価上昇余地が期待されやすい点が投資妙味です。
次世代半導体技術の独占:2nm以降の最先端半導体製造に必須のEUV技術において、検査装置を独占供給。経済安全保障上極めて重要な技術を日本企業が握る希少な事例。政府の先端半導体支援策の恩恵を直接受ける。
三菱重工業(Mitsubishi Heavy Industries)(7011)

三菱重工業は防衛装備品、航空機エンジン、社会インフラ機器を幅広く手がける日本有数の重工業大手です。政府が防衛予算やインフラ投資を重視する政策を打ち出す局面では、防衛関連受注の増加、長期安定収益源の拡大が期待されます。また、造船・エネルギー・社会インフラの柱もあり、複数の政策テーマに支えられるため、中長期投資妙味が強い点が魅力です。
防衛力強化の中核企業:防衛費増額(GDP比2%目標)に伴う防衛装備需要の最大受益者。長射程ミサイル等の重要装備を手掛け、2029年頃には防衛事業売上が現在の3倍となる1.5兆円規模に達する見込み。ガスタービンでは脱炭素・エネルギー安保にも貢献。
名村造船所(Namura Shipbuilding)(7014)

名村造船所は大型船舶の設計・建造を行う造船企業で、造船・海洋インフラ関連で世界的な存在感を持っています。政府が造船産業の振興や社会インフラ強化を政策テーマに掲げる局面では、受注拡大・生産性向上の追い風が期待される分野です。造船業界は景気循環性があるものの、政府支援や海運需要回復局面では高い利益拡大余地を持つため、テーマ株として注目されます。
海上輸送力強化と経済安保:政府が重視する海上輸送インフラの維持・強化において重要な役割。資源・エネルギーの安定調達に不可欠な海運力を支える。サプライチェーン強靭化の観点から国内造船業の維持・発展が政策課題となる中、その一翼を担う。
川崎重工業(Kawasaki Heavy Industries)(7012)

川崎重工業は防衛装備、水素エネルギー、輸送機器など多岐に事業展開する総合重工業です。防衛・環境インフラ・エネルギー関連が政策テーマになるほど受注増や売上拡大が期待されやすく、政府支援強化局面で評価されやすい銘柄です。多角化された収益構造はリスク分散につながり、中長期投資妙味を高めるポイントになります。
防衛・インフラの両輪強化:防衛費増額で防衛事業が拡大する一方、新幹線等の鉄道車両で国内外のインフラ整備に貢献。水素サプライチェーン構築にも注力し、脱炭素社会実現に向けた政府方針とも合致。「ネクスト三菱重工」として期待される成長株。
IHI(IHI Corporation)(7013)

IHIは船舶用エンジンやエネルギー機器、防衛・宇宙関連機器を手がける重工業で、社会インフラや国策分野と密接に関係します。造船エンジンや環境技術など産業政策の柱となる分野で存在感を持ち、政府支援が加わるテーマでは企業価値が再評価される可能性があります。多様な収益源から景気循環への対応力があり、中長期的な投資視点での魅力があります。
航空宇宙産業の育成:政府が推進する航空宇宙産業振興において中核企業。民間航空エンジンの国際共同開発に参画し、防衛用エンジンも手掛ける。宇宙開発では国産ロケット開発を担い、宇宙基本計画の実現に不可欠な存在。インフラ老朽化対策にも貢献。
明電舎(Meidensha)(6508)

明電舎は社会インフラ機器や産業用システム、電力・交通インフラ関連機器を手がける企業です。政策でインフラ整備や省エネ・再エネ支援が掲げられる局面では、同社の受注機会が増える可能性があり、安定収益源として評価されやすい点が投資魅力です。また、DX・デジタル制御機器を含む製品群は中長期的な成長テーマとも親和性が高い銘柄です。
電力網強靭化と地方創生:再エネ拡大に伴う電力網整備、老朽化した送配電設備の更新需要に対応。特に北米での変電需要増に強み。鉄道インフラでは新幹線・在来線の電力供給システムを提供し、地方交通維持に貢献。水インフラ分野では上下水道の広域化・効率化を支援。
日立製作所(Hitachi)(6501)

日立製作所は総合電機大手で、IoT・DX・社会インフラ・エネルギー・ヘルスケア等多岐に渡る事業ポートフォリオを持ちます。政府がDX・スマートインフラを重要視する政策を進める局面では、日立グループの技術基盤と幅広い受注力が競争力となるため、中長期的な安定成長株として注目されやすい点が投資妙味です。
社会インフラのDX推進:政府のDX推進、脱炭素化、インフラ老朽化対策の全領域に関与。Lumada(IoT/AIプラットフォーム)によるスマートインフラ構築、鉄道システムの海外展開、再エネ拡大に向けた電力網ソリューション、原子力発電所の保守等、骨太の方針が掲げる重点分野を網羅的にカバー。
まとめ|骨太の方針から読み解く政策テーマ別投資の考え方
骨太の方針で注目される関連株を俯瞰すると、政策テーマごとに業界の偏りがあることが分かる。
まず、AI・半導体分野では、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)が中核を担い、ソフトバンクグループ(9984)が投資・プラットフォーム側から関与する構図となっている。これは、先端技術を「国内で育て、産業競争力につなげる」という政策意図を反映したものだ。
次に、防衛・重工・安全保障分野では、三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)が中心となる。防衛力強化や経済安全保障の観点から、長期的かつ安定的な需要が見込まれやすく、政策との連動性が高い業界といえる。
さらに、造船・社会インフラ分野として名村造船所(7014)や明電舎(6508)が挙げられる。物流・エネルギー・老朽インフラ更新といった構造的課題に対応する分野であり、景気循環の影響を受けつつも、国策による下支えが期待される点が特徴だ。加えて、日立製作所(6501)はDXと社会インフラを融合させる存在として、複数の政策テーマを横断する位置づけにある。
骨太の方針に基づく投資の本質は、短期的な材料探しではなく、「国がどの産業を中長期で育てようとしているのか」を見極めることにある。政策テーマごとに業界を整理し、自身の投資スタンス(成長重視か安定重視か)に合わせて銘柄を選ぶことが、骨太の方針を活かした投資につながるだろう。
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