【高校政治経済】学習内容の要点をまとめです。大学入試やテスト対策にご利用ください。
- 学習内容の要点をまとめ(高校政治経済)
- 日本国憲法の三原則
- 日本国憲法の制定
- 大日本帝国憲法
- 基本的人権の尊重
- 平等権
- 自由権
- 社会権
- 参政権
- 新しい人権
- 世界の政治制度
- 経済のしくみ
- 資本主義経済のしくみ
- 社会主義経済のしくみ
- 市場経済の機能
- 資源の最適配分
- 価格
- 需要と供給の関係
- 均衡価格の決定
- 貿易の意義
- 貨幣の働きと種類
- 貨幣
- 金融の働き
- 独占禁止法
- 金融機関
- 市場の失敗
- 金融自由化
- 規制緩和
- 企業の社会的責任
- 租税の意義
- 財政機能
- 国家予算
- 公共事業
- ボーダレス・エコノミー
- 公開市場操作
- 支払(預金)準備率操作
- 公定歩合政策(金利政策)
- 産業構造の高度化
- ベティ・クラークの法則
- 知識集約型産業
- 経済のサービス化
- 中小企業の問題
- 労働問題
- 家計
- 国民経済
- 消費者問題
- 日本の社会保障制度
- 経済のソフト化
- 国民所得
- 国民総生産(GNP)
- 国内総生産(GDP)
- 国民純福祉(NNW)とグリーンGDP
- インフレとデフレの定義
- 通貨制度
- 地球環境問題
- 南北問題
学習内容の要点をまとめ(高校政治経済)
高校で履修する「政治・経済」の位置づけとしては、新学習指導要領では、公民科目のうち、「公共」は基礎、「政治・経済」と「倫理」が探究となっています。つまり、「公共」という科目で基礎を学び、発展的に学習し、社会形成に向かう科目として「政治・経済」があります。
「公共」を学んだ後で「政治・経済」を学習することになるので、必然的に第2学年ないし第3学年で履修します。
日本国憲法の三原則
日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正という形をとったが、内容的には大日本帝国憲法とはまったく異なる原則が盛り込まれた新しい憲法である。
- 国民主権
- 基本的人権の尊重
- 平和主義
の3つを基本原則としている。民主主義の原理を取り入れたなかで、とくに徹底した平和主義を規定した憲法前文や第9条を持つことから、日本国憲法は平和憲法ともよばれている。日本国憲法は、前文と11章103の条文で構成されている。前文には、日本国憲法の基本的な理念が示され憲法解釈の際の基準とされる。
日本国憲法の制定
1945(昭和20)年8月、日本政府はポツダム宣言を受諾して、連合国に降伏した。
日本は占領され、その占領行政を担当した連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官となったマッカーサーは、1945年10月、アメリカ合衆国の対日方針にそって明治憲法を改正する必要性を幣原喜重郎首相に示唆した。GHQは改正案を拒否した上で、マッカーサー三原則に基づいたマッカーサー草案を提示し、それを原型とする日本政府案がまとめられた。
大日本帝国憲法
日本最初の近代憲法は、1889(明治22)年に制定された大日本帝国憲法(明治憲法)である。天皇を中心とする中央集権国家の樹立をめざしていた明治政府が、君主権力の強い当時のプロイセン憲法を参考にして制定した欽定憲法である。
日本国憲法との比較
大日本帝国憲法 | 憲法 | 日本国憲法 |
---|---|---|
1889年発布、1890年施行 | 成立 | 1946年公布、1947年施行 |
欽定 | 性格 | 民定 |
天皇 | 主権者 | 国民 |
神聖不可侵 | 天皇 | 象徴天皇 |
法律の範囲内で自由や権利を認める | 国民の権利 | 基本的人権は不可侵・永久 |
天皇の協賛機関 | 国会 | 国権の最高機関、唯一の立法機関 |
天王を助けて政治を行う | 内閣 | 議院内閣制 |
天皇の名において裁判 | 裁判所 | 違憲立法審査権がある |
法律によって制限できる | 基本的人権 | 最大限に尊重、男女平等 |
兵役の義務あり、天皇の統帥権 | 軍隊 | 兵役の義務なし、戦争放棄 |
基本的人権の尊重
憲法97条に
- 憲法上の基本的人権は、人類の長い歴史のなかで確立されてきたものであること
- 人類にとって大切なもので永久不可侵であることと
が示されている。
平等権
平等権・平等に生きる権利についてまとめています。個人が尊重される前提として、人間の平等な関係が必要となってきますが、身分や性、人種などによる差別のない社会に生きる権利を平等権という。
現実には、さまざまな社会的不平等が存在しており、その解決が望まれている。
自由権
自由権とは、個人が国家権力の不当な干渉を受けることなく自由に生きる権利のことで、日本国憲法が保障する自由権は、
- 人身(身体)の自由
- 精神の自由
- 経済活動の自由
の3つに大別にされる。
社会権
基本的人権の内容は、18世紀までは国民が国家による不当な支配から解放され、自由をめざす自由権が中心であった。このころの国家は、個人の権利に干渉すべきではないとされ、おもに治安の維持や国防などを任務とする夜警国家が理想とされた。
- 夜警国家…政府の役割を国防や治安の維持など必要最小限なものとする国家
資本主義経済の発達とともに貧富の差が拡大してきたことから、20世紀に入ると、国民が国家に対して人間らしい生活を要求する社会権(社会権的基本権)の必要性が主張されるようになった。このため、現代では治安の維持や国防だけでなく、社会的弱者の救済や医療・福祉・教育の充実を任務とする。福祉国家がめざされている。
参政権
日本国憲法は、人権保障を確実なものするために、国民が国政にさかできる参政権や国に一定の行為を請求できる国務請求権(受益権)を保障しています。そのあたりについてまとめています。
国民が政治に参加する権利が、参政権である。日本では、1925年に男性のみの普通選挙が導入され、戦後の1945年には男女の普通選挙が導入された。普通選挙によって、政治的な平等を確保することができたといえる。
日本国憲法における参政権は、選挙権・被選挙権のみであると考えられがちですが、直接国民が国家の政治に参加できる制度も存在する。
新しい人権
20世紀に入って、時代の要請から社会権が登場してきたことからもわかるように、社会の変化によって人権保障の内容も多様化。日本でも、日本国憲法の制定以降、急激な高度経済成長にともなって発生した公害問題や、情報化社会の到来にともなう諸問題が生じたことにより、憲法上に明文規定がない新しい人権が主張されている。
新しい人権として、
- 環境権
- プライバシーの権利
- 知る権利
が知られている。
世界の政治制度
(例)イギリスの政治制度とは?
イギリスの政治制度の特徴として
- 立憲君主制…国王を元首としながら議会で制定された法に基づいて政治がおこなわれる
- 不文憲法議院内閣制…成文憲法のない
などがあげられる。
経済のしくみ
現在の世界には、
- 資本主義経済
- 社会主義経済
という2つの経済体制があるが、多くの国々が資本主義経済のしくみを採用している。
資本主義経済のしくみ
資本主義経済は、つぎの3つがおもな特徴としてあげられる。
- 私有財産制:機械や原材料などの生産手段の私有が認められている。
- 経済活動の自由:利潤の追求を目的とした自由競争がおこなわれている。
- 多くの財は、市場で売るための商品として生産され、労働力も商品となっている。
社会主義経済のしくみ
資本主義経済の確立期には、労働者は低賃金・長時間労働などの劣悪な労働条件と経済的不平等のもとにおかれ、貧困に苦しんでいました。マルクスより先にあらわれたフランスのサン・シモンやフーリエ、イギリスのロバート・オーウェンらの思想は、マルクスの科学的社会主義に対して、空想的社会主義といわれる。
社会主義経済では、生産手段の私有は原則として認められず、
- 工場や機械設備・農地などの生産手段は国有または公有
- 生産は政府の立てた計画に基づいておこなわれる(計画経済)
- 成果は労働に応じて分配
- 精算手段を私有する資本家はおらず、すべての国民は働く者である労働者と農民
市場経済の機能
資本主義経済のもとでは、
- 企業は生産物を商品としてより安くく売ろうとし(供給)
- 消費者はより良い商品をより安く買おうとする(需要)
この供給と需要が価格によって調整される場が市場である。
一般に自由競争がおこなわれている市場(完全競争市場) は、供給が需要より多いと商品が売れ残り、価格は低下する。価格が下がると、供給側は供給を減らし、需要側は需要を増やす。
逆に、需要が供給より多いと品不足となり、価格は上昇する。価格が上がると供給側は供給を増やし、需要側は需要を減らす。このようにして、需要と供給の関係によって価格は上下するとともに需要と供給は価格を目安に調整される。
資源の最適配分
資本が斜陽産業から成長産業に移動し、資源の最適配分がおこなわれる。 市場には、
- モノやサービスが取引される商品市場
- 労働が取引される労働市場
- 資金が取引される金融市場
- 外国通貨が取引される外国為替市場
金融市場には、株式な どが取引される株式市場(証券市場)も含まれる。これらの市場では、賃金や金利、外国為替相場(為替レート)、株価がおのおのの価格の役割を果たしています。
価格
経済活動の中心は、市場取引です。売り手と買い手が出会う場所は、すべて市場です。株式市場もその1つです。市場経済では、必要な財・最頻値を貨幣、つまりお金と交換に商品として獲得します。このときの、商品と貨幣の交換比率が価格ということになります。
- 市場…モノを売買する場所の総称。
- 財…食料、衣料、住宅などの有形商品。
- サービス…衣料や交通、保険、教育、公務など無形の商品。
需要と供給の関係
価格は、モノを買うか買わないかを決定する大きな要素ですから、価格には、経済行為の選択機能があるといえます。市場では、価格がその商品の需要と供給を決めます。
- 需要…消費者がモノを買うこと
- 供給…生産者が作ったモノを売ること
一般的に、需要は根が上がれば減少し、値が下がれば、増加します。安ければ、買うという当たり前の行為です。一方で、供給は値が上がれば、増加し、値が下がれば減少します。価格によって消費行動は大きく左右されるわけです。価格が高くなれば、超過供給となり、価格が安ければ、超過需要がうまれます。
- 超過供給→売れ残り→価格下落
- 超過需要→品不足→価格上昇
均衡価格の決定
均衡価格は、その商品にとって最も適切な価格です。均衡価格は、需要量=供給量の状態が実現し、この状態を資源の最適配分といいます。売れ残りも品不足もない、いい状態になります。
貿易の意義
原油などの地下資源が豊かな国、工業が発達している国、工業が発達している国など、各国の産業の状況はさまざまである。
国内の工業が成長していなかったドイツでは、保護貿易主義を主張した。発展がはじまったばかりの幼稚産業に国際競争力はなく、貿易はその産業分野の発展性を失なわせるものと主張した。
国際分業をするためには、各国が輸入や輸出に制限を設けない自由貿易がおこなわれるべきとした。当時のイギリスは、高い工業力を持ち、国際競争力のある工業製品を輸出して、周辺諸国の安い農産物を購入することが利益をもたらすと考えた。
自由貿易と保護貿易をめぐる考え方の対立は、先進国と発展途上国、先進国相互間の貿易について、現在もくり返されている。相互依存関係が深まった現在の国際社会では、自由貿易を推進させるために自由貿易への障害を取り除こうと関税及び貿易に関する一般協定(GATT)や世界貿易機関(WTO)などで話し合いが進められている。日本でも、農業や衣料品などの軽工業分野の保護と輸入自由化との関係が課題となっている。
貨幣の働きと種類
資本主義経済では、モノやサービスは商品として提供されるが、それを買った人はその対価として代金を貨幣で支払わなければならない。また、労働者は労働を提供した対価として、賃金を貨幣で受け取っている。このように、貨幣は経済活動の 「血液」のような役割を果たしている。
経済成長、景気変動、物価などの経済活動の大きさや動きは、 世のなかに出回っている貨幣の量である通貨供給量(マネー・サプライ)の大きさとその回転の速さに大きな影響を受けている。たとえば、通貨供給量が多ければ、消費者の購買意欲が増し、企業も資金を借りやすくなり、設備投資も増加するが、一方で、需要が増加するために物価は上昇する。
マネー・サプライとは、金融機関以外の個人や企業などが保有する現金や預金などの流動性が高い通貨量のこと
- M1…現金通貨と要求払い預金(当座預金や普通預金)
- M2…M1に定期預金を加えたもの
M2に譲渡性預金(CD)を加えたものが通貨供給量として使われている。
貨幣
- 商品の価値をはかる価値尺度
- 同じ価値を持つ商品との交換手段
- 売買などで生じる債務の支払手段
- 価値を保存しておく価値貯蔵手段
としての機能がある。
金融の働き
経済活動に必要な資金を、必要なところに融通し合うことを金融という。高度経済成長期の企業の設備投資資金は、おもにこの間接金融で調達されたため、銀行を中心とした企業グループが形成された。バブル崩壊後は、企業が株式や社債を発行して、銀行を通さずに直接資金を調達する直接金融が多くおこなわれるようになっている。
現在のように企業規模が大きくなると、企業は株式や社債の発行、金融機関からの借入などによって、広く資金を調達する必要がある。このため、現在の資本主義経済では、銀行や証券会社といった金融機関の役割が重要になっている。
独占禁止法
1947年に制定された独占禁止法の正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。目的は、自由競争を実現して、市場機構つまり価格メカニズムを働かせることです。
カルテル(企業連合)は「協定」です。
- 価格カルテル…価格を同じにしようとすること
- 生産カルテル…生産量を同じくらいにして増やすのをやめようとやめること。
独占禁止法の歴史(改正の流れ)
- 1947年 カルテル全面禁止(背景に、財閥解体=GHQの民主化政策の1つ)
- 1953年 不況カルテル、合理化カルテルはO.K(経済成長の実現へ)
- 1999年 不況カルテル、合理化カルテルを廃止(規制緩和)
金融機関
金融を仲介する金融機関には、
- 銀行
- 証券会社
- 保険会社
- 政府系金融機関である日本政策投資銀行・国民生活金融公庫
などがある。
銀行には、全国的に営業を展開している都市銀行と、一定地域を中心に営業を展開している地方銀行とがある。また、日本銀行に対して民間の銀行を市中銀行という。銀行は家計・企業から資金を預かり(預金)、資金を企業などに融資し、家計・企業に支払う預金利子より高い貸出利子を企業などから得ている。
市場の失敗
市場限界(失敗)とは、市場メカニズムがうまく機能しないことで、➊寡占・独占の弊害、➋外部不経済などの外部効果、➌公共財の不十分な供給などがあります。
市場の失敗とは、市場機構が成立しない場合や市場が成立しても問題が生じている場合のことをいいます。
完全競争市場が不成立とは、独占・寡占状態であることも1つです。価格の変動が起こらず、価格の自動調節作用がはたらいていない場合は、市場の失敗におちいるケースが多いです。
たとえば、電気・ガス・水道などのように公共性の高い財やサービスについては。これまで政府が市場介入して政策的に統制価格を設定してきました。現在では、規制緩和が進み、電気、ガスなどについては、自由化が図られるようになりました。
金融自由化
「フリー・フェア・グローバル」をかかげ、欧米に遅れをとった日本の金融システムを抜本的に改革するプロジェクトとし、金融自由化つまり金融面での規制緩和の動き活発になったのは、大きく4つあります。
1.間接金融依存度の低下
第一にこれまで資金の借手であった企業の財務体制が強化されて、自己資本比率が高まり、間接金融依存度銀行からの歳入金の割合が低下したことが挙げられます。この結果、政府や日銀による介入・規制による金利政策効果は限定的となりました。
2.大量の国債発行
第二に政府部門の資金不足のために大量の国債が発行されたことです。
以前は規制金利がとられていたので、政府又は日銀が市中銀行の金利を統一的に決めていました。そして、政府は銀行の利子を低めにおさえながら、自分は少し高めの利子を約束し、国債発行していました。国債というのは、政府から見れば借金、国民にとっては、貯金と同じようなものです。国に一定期間お金を貸せば、利子をつけて返してもらうわけですから、少しでも高い利子の高い国債を買うわけです。
政府が国債を乱発して、国民のお金どんどんとっていくと、銀行にお金が集まらなくて困る。その結果、銀行業界が、政府に金利の自由化の保障を要求することになりました。
3.個人資産の増加
第三に個人の資産が増えて、金利の有利な金融商品を求めるになったこと。個人の資産運用に関しも、多様化してきて儲かるものに資産が集まるようにになりました。ここでも自由競争は求められました。
4.アメリカの要求
第四に、外国金融機関の日本市場参入の要求が強まったことです。アメリカが日本の金融市場開放要求してきたことが、一番の要因。1980年代になると円の国際化、日本への金融市場開放要求は本格化しました。
アメリカの銀行は、日本で営業するためには、日本の有権者に少しでも高い金利で貯金してもらい。少しでも安い金利でお金を貸す努力をしてシェア拡大できません。日本人は、馴染みにある日本の銀行に預金してしまうからです。ですからアメリカの銀行が日本の金融市場に参入して日本の銀行に勝つためにはこういう努力ができる自由競争しかありませんでした。
金融の自由化の背景として、特にこのアメリカの要求と国債の大量発行による銀行の内部からの要求というのを押さえておきましょう。
規制緩和
政府が企業の自由な活動を制約することを、規制といいます。日本では、どんな仕事をするにしても担当官庁の許可が必要となります。これを許認可行政といいます。近年市場の活性化、国際化な対応のため規制は緩和されてきています。それは、行政府の許認可権限を縮小して、企業の市場参入を自由化しビジネスチャンスを拡大しているわけです。競争原理によって生産性を高めて市場を活性化するという考え方です。
1970年代以降、特に1980年代においては世界的な金融の自由化が進められ、金利の決め方や銀行証券会社などの業務の規制が大幅に緩和されました。日本でも1997年より日本版ビッグバン(金融大改革)と呼ばれる、銀行証券・保険業務自由化を内容とする大改革がありました。
日本版金融ビッグバンの内容
- 大きく株式仲介手数料の自由化
- 持株会社解禁
- 外貨交換業務の自由化
企業の社会的責任
企業は市民社会の一員として、最低限の法令遵守や利益貢献といった責任を果たすだけではなく、市民や地域・社会の要求に応え、社会貢献や社会的配慮、情報公開や対話を自主的におこなうべきであるという考え。
具体的には、
- 地球環境への配慮
- 適切な企業統治と情報開示
- 誠実な消費者対応
- 環境や個人情報保護、ボランティア活動支援などの社会貢献
- 他域社会参加などの地域貢献
- 安全や健康に配慮した職場環境と従業員支援
環境保全などのプラス面だけでなく、商品の安全性や経営上の問題などのマイナス面も含めた情報開示(ディスクロージャー)や企業トップが説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことが必要である。
租税の意義
租税は、国や地方公共団体がおこなうさまざまな経済活動を支えるおもな財源であり、日本国憲法では納税の義務が国民の三大義務の一つである。租税の徴収にあたっては、公平の原則が大切になる。
租税には国に納める国税と、地方公共団体に納める地方税がある。国税のおもなものは所得税と法人税で、税収全体の半分以上を占めている。地方税には、住民税である(都)道府県民税や市町村民税土地や家屋に課税される固定資産税企業や商店などの事業に課税される事業税がある。
また、租税は租税負担の観点から、直接税と間接税に分けられる。日本の税制は直接税が中心となっている。直接税は、租税負担者と実際に納税する者が同一で、所得税や法人税・相続税・住民税などがある。間接税は、租税を負担する担税者と実際に納税する者が異なる税で、消費税や酒税、海外から輸入した商品に課税される関税などがある。
財政機能
現代社会では、経済活動における政府の役割が非常に大きくなっている。この政府(国および地方公共団体)の経済活動を財政といい、その機能には、
- 資源の配分機能
- 所得の再分配機能
- 景気の調節機能
がある。
道路や空港などの公共財(社会資本)、警察や消防などの公共サービスは、社会生活にとって必要であるが、事業規模も大きく、利潤追求を目的とする私企業では供給がむずかしいという性格を持っている。
国家予算
財政活動は、1年間を会計年度とする予算に基づいておこなわれており、日本では4月1日から翌年の3月31日までが、一会計年度とされている。予算は一般会計予算と特別会計予算からなる。
- 一般会計予算…内閣で1年間の歳出と歳入の原案が作成され、国会で承認を受けて執行されることになってる財政(民主主義原則)。
予算には、そのときの経済の状況や政府が重点をおく経済策があらわれる。たとえば、2009年度の一般会計予算をみてみると、歳入のおもなものは租税であるが、国債の発行による収入が歳入全体の約30%を占めるまでになっている。その結果、歳出でも国債の利払いや償還のための国債費が歳出全体の約23%と大きな割合を占めている。
- 一般会計の目的…資源配分機能、所得の再分配、景気の安定
- 一般会計の財源…租税
歳出では
- 高齢社会の進行から社会保障関係費が約28%
- 地方財政の格差を是正して、全国どの地方公共団体でも同じレベルの行政サービスが受けられるようにするための地方交付税交付金が約18%,
- 景気対策のための公共事業関係費が約8%
の割合を占めている。
公共事業
公共事業では、これまで生産関連社会資本の整備が大きな割合を占めていたが、最近は公園や上下水道などの生活関連社会資本の充実や、情報通信分野の成長産業育成のための基盤整備が求められている。
また、環境への影響を事前に調査する環境アセスメントや不要な公共事業に対する「時のアセスメント」制度の導入など、公共事業の見直しがおこなわれるようになっている。
ボーダレス・エコノミー
ボーダレス・エコノミーのもとでは、国際取引、特に貿易によって国内流通通貨量は変化し、国内物価・景気に変化を与えています。たとえば、輸出が増加すると、外国からの支払いとして国内に通貨が流入します。すると。国内流通通貨量が増加するので物価が上がり。景気は過熱します。つまり、国際収支の黒字が国内流通通貨量を増加させ、物価上昇・景気過熱を招きます。
輸入が増加すると外国への支払いが必要となるので、通貨が流出します。すると国内流通通貨量が減少するので物価が下がり。景気は停滞します。つまり、国際収支の赤字は、国内流通通貨量を減少させ、物価下落・景気停滞が招く。
よって、国際収支の均衡は、国内流通通貨量を安定させるので、物価の安定と景気の調整・安定の前提条件となります。
公開市場操作
公開市場操作によって、通貨用の調節ができます。
■公開市場操作の具体的な政策
日本銀行と市中金融機関の間での売りオペと買いオペを総じて通貨量を調節し、金融市場の動きに影響を与えています。流通通貨量を直接増減させるので、量的金融政策といいます。
- 売りオペレーション(売り操作)…日銀が有価証券を市中金融機関に売りつけたら、金融機関は代金を支払うことになりますね。その結果、市場の流通通貨量が減って、景気過熱・インフレがおさまります。日銀が売るので、売りオペレーション(売り操作)といいます。
- 買いオペレーション(買い操作)…市中金融機関が持っている手形、国債などを買うことです。日銀が金融機関に代金を支払うので、市場の流通過料は増えます。
支払(預金)準備率操作
受けた預金のうち、貸し出しに回さずに預金の返信準備金として積み立てておく部分を準備預金または支払準備金といいます。その割合が、支払準備率(預金準備率)です。
準備率が10%なら、100万円のうち10万円を準備金として、残りの90万円しか貸し出すことができなくなります。
それが逆に準備率が1%なら、1万円を準備金として、残りの99万円を貸すことができます。
つまり、銀行から貸出量は、準備率が高くなると減少することになります。
この操作により通貨量を調節することが、支払準備率(預金準備率)操作です。
景気過熱・インフレ対策として、流通通貨量を減少させる必要があるので、支払準備率を引き上げて市中銀行の資金を取り上げます。逆に不況・デフレ対策として、流通通貨量を減らさないために支払準備率を引き下げて市中銀行の資金を取り上げないようにします。
公定歩合政策(金利政策)
市中銀行への貸出金利が上昇すると、銀行が企業に貸すときの金利も上昇します。高い金利でお金を借りた市中銀行は、もとをとるためにより高い金利で貸すからです。つまり、公定歩合の上げ下げの操作は、民間の資金需要に影響を与えるということです。
このように、公定歩合の上下によって間接的に流通通貨量を調節していく政策を公定歩合政策といいます。これは、質的金融政策といえます。
■公定歩合のインフレ対策
景気過熱・インフレ対策としては、流通通貨量を減少させなければいけないので、公定歩合を引き上げます。これを、金融引き締めといいます。これによって、市中銀行の貸し出し金利が上昇し、企業の資金需要が抑えられて、投資が鎮静化し景気過熱が収まります。
■公定歩合のデフレ対策
逆に、不況・デフレ対策としては、公定歩合を引き下げることになります。これを金融緩和という。買うて歩合を引き下げれば、市中銀行の貸出金利が下落するので、企業などの資金需要が拡大して、投資が増加し景気が浮揚することになります。
1955年以来、不況対策として徹底した金融緩和が行われ、公定歩合を0.5%。さらには、2001年に0.1%(ゼロ金利政策)。そして、条件付きで、2016年マイナス金利を導入しています。
産業構造の高度化
日本では、高度経済成長期に国内総生産や就業者数の構成比でみた産業の中心が、
- 第一次産業
- 第二次産業
- 第三次産業
と移行し、産業構造の高度化が進んだ。また、製造業内部では、繊維・雑貨などの軽工業から造船・鉄鋼・石油化学などの重化学工業に生産の中心がしだいに移り、重化学工業化が進行した。
- 農業<工業<商業
の順に収益が高くなることを、イギリスのウィリアム・ペティは経験則から主張したのである。
ベティ・クラークの法則
その後、イギリスのコーリン・クラークは、
- 第一次産業を農業・牧畜業・水産業・林業など自然からの採取産業
- 第二次産業を製造業・ 鉱業・建設業・ガス・電気事業
- 第三次産業を商業・運輸・通信・金融・公務・その他のサービス業
に分類し、経済発展が進むと第二次産業・第三次産業の地位が上昇することを明らかにした(ベティ・クラークの法則)。
知識集約型産業
その後、第1次石油危機により、企業は省資源・省エネルギーのために合理化・減量化を進めた。その結果、鉄鋼や石油化学などの「重厚長大」型の素材産業から、自動車や工作機械・電気機器などの加工組立産業、さらに情報技術(IT)産業やコンピュータを利用した先端技術(ハイテク)産業など、より付加価値の高い軽薄短小型の知識集約型産業へと基軸となる産業の転換が進んでいる。
経済のサービス化
経済のサービス化が進んだ背景には、IT革命に支えられた情報通信産業の発達、所得水準 の向上や余暇時間の増加によるレジャーや旅行関連産業の成長。女性の社会進出などにともなう外食産業の増加、高学歴化による教育産業や高齢社会を迎えての福祉サービス関連産業の拡大がある。
中小企業の問題
日本の中小企業問題の特質として、日本の製造業に属する企業のうち98%は中小企業であり、従業員数でも60%以上を占めている。
しかし、中小企業は、大量生産による「規模の利益」を活かせないため、労働集約的な産業分野や地域の特性を活かした地場産業的な分野に多く、資金調達力などの面でも経営基盤が弱い。
中小企業の多くは、大企業から部品の製造や加工を請け負う下請けや系列企業の立場におかれることが多かった。資金や技術を親企業にたより、価格や受注量の調整によって、景気変動の安全弁にされることもあった。
原材料や部品を親企業に安く納品し、親企業が生産した製品を高く購入する不利な条件のもとにおかれることもあっ た。さらに、労働条件も大企業とくらべ低賃金・長時間労働で、 福利厚生も不十分なことから、大企業と中小企業の格差は日本経済の二重構造といわれた。
労働問題
資本主義経済が成立したころには、資本家はより安く商品を売って、より多くの利潤を上げようとしていた。
そのために、
- 低賃金長時間労働
- 労働災害
- 児童労働
などの労働問題が発生していた。これに対して産業革命を最初に達成したイギリスでは、19世紀初めに、工場労働者が各地で自然発生的に機械打ち壊し運動 (ラダイト運動)をしたり、暴動をおこしたりした。やがて、労働者が組織をつくり団結して資本家と対峙するようになると、 労働組合法などが制定され、団結権も法的に認められるようになった。
労働組合の組織は拡大し、全国的な組織がつくられるようになった。労働組合の結成が進み、社会主義運動と関係が深まると、インターナショナルという国際的な連帯組織が結成された。
日本でも産業革命とともに、低賃金・長時間労働などの労働問題がおこり、
- 1897年…労働組合期成会が結成
- 大正期…友愛会などの労働者組織が結成(労働争議が各地でおこり、ストライキなどが実行)
こうした動きは治安警察法(1900年)や治安維持法(1925年)によって弾圧された。
労働組合は、
- 全国労働組合総連合(全労連)
- 全国労働組合連絡協議会(全労協)
を組織している。
最近、労働組合の組織率は年々低下しており、労働者の5人に1人の割合で組織されている程度である。それは若年層の組合離れ、組織化がむずかしいサービス産業に従事する労働者や非正規社員のパートタイマー、派遣社員などの増加が原因といわれている。
私たちが生活する家計は、働いて得た所得をもとにして営まれているので、働く場を国が保障することは、人びとの生活を 安定させるために重要なことである。
憲法では「すべて国民は、 勤労の権利を有し、義務を負ふ」と勤労権を保障しており、政府は公共職業安定所(ハローワーク)で職業紹介をしたり、職業訓練所で技能訓練をするなど、勤労の機会を確保できるようにしている。
賃金、就業時間休息その他の勤労条件に関しては労働基準法が定められ、労働条件を「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」としている。さらに全国に労働基準監督署をおいて、労働基準法が各事業所で守られているかを監視して、違反を取り締まっている。
また、労働者一人ひとりでは立場が弱いため、労働者が使用者と対等に交渉できるよう、労働組合を組織する権利団体交渉をする権利団体行動をする権利を憲法で保障している。
労働三権とよばれ、
- 労働基準法
- 労働組合法
- 労働関係調整法
で細かに規定されている。
今日、女性の高学歴化とともに、女性に対する社会の意識がかわり、産業構造の変化によるサービス部門が増加したことを背景に、女性の職場進出にはめざましいものがある。
一方で、時間外勤務や深夜労働・休日労働における 女性保護規定が撤廃された。 女性の就業には零細なサービス業のパートタイマーが多かったり、男性との賃金格差や管理職につく割合が低いなどの課題も残されている。
高齢化の進行にともない、年金が支払われるまでの高齢者が働く場の確保。 政府は、1998年から定年を60歳以上にすることを義務づけるとともに、再任用制度の導入を推進したり、「65歳まで現役である社会」をめざして定年の65歳延長を推進している。
若年層を中心にフリーターやニートが増加したり、職場への定着率が低いことも問題となっている。
- 1993年に短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律が制定され、雇用管理の改善がはかられた。
- 1985年に労働者派遣法が成立して、派遣労働は労働基準法6条により禁止されていたが、派遣元・派遣先・労働者にも利点があるとして通訳、アナウンサーなど専門職について派遣労働が認められた。
- 1999年には労働者派遣法が改正され、ほとんどすべての業種について派遣労働が許されるようになった
「派遣切り」が社会問題化し、見直しがはかられている。その他、日本は出入国及び難民認定法により、単純労働への外国人の就労を禁止している。働く場を求めて不法入国や不法就労する外国人労働者も多い。劣悪な労働条件 や賃金の中間搾取、パスポートをとりあげての強制労働、労災補償を実質的に受けられないなどの問題が生じている。
家計
家計の収入には、
- 労働によって得た賃金や個人の事業の収入などの勤労所得
- 財産の運用によって得た財産所得
- 高齢者の収入の大きな部分を占める年金
- 失業したときに支給される失業保険給付などの移転所得
があります。
財産所得には、預貯金からの利子、株式からの配当、家や部屋を貸して得る家賃、土地を貸して得る地代などがある。
家計が、実際に使い道を自由に決められるお金は、所得から税金や社会保険料を差し引いた残りの部分で、これを可処分所得という。また、可処分所得に占める消費の割合を消費性向といい、貯蓄の占める割合を貯蓄性向という。
日本の貯蓄性向は病気や教育・老後に備えての貯蓄が多く、諸外国とくらべて高かった。こうした貯蓄は銀行預金などの貯金となり、企業へ融資されて設備投資の資金や財政投融資の原資となり、公共事業の資金などに活用された。
日本の貯蓄性向は、景気後退による家計所得の伸び悩みや、貯蓄を取り崩して生活費にあてる高齢者所帯の増加により、2007年には貯蓄率は33%に低下し、2000年以降はドイツやフランスを下回っている。 一般的に、経済が発展して所得が多くなると、消費支出に占める食料費の割合であらわされるエンゲル係数が小さくなって、 教育・教養・娯楽関係の支出の割合が大きくなり、消費の多様化・高級化が進む傾向がある。
国民経済
現在、日本の国民総支出の50%近くを民間消費支出が占め、家計の消費動向が国民経済に大きな影響を与えるようになっている。消費は、高度経済成長期にみられたように、好況で所得は国民経済が多くなると増加し、それがさらに好況を拡大する。
逆に不況や景気の先行きが不透明なときは、消費が落ち込み、不況からの回復が遅れる。また、景気の過熱や石油危機などによって、物価が上昇すると、賃金の上昇はそれより遅れる傾向があるため、実質所得が一時的に減少し、消費は落ち込む。
- バブル経済期のように、株や土地の価格上昇によって人びと の資産の価値が上がると、消費が増加(資産効果)
- 外国為替相場の円高が進むと輸入品の価格が下がり、 海外の有名ブランド品やアジアNIES製品の消費が増加する傾向
消費者問題
- 安全性の問題…商品の構造の欠陥から消費者に被害を与える欠陥商品、有毒物質の混入や有害な食品添加物の使用による食品公害、医薬品の副作用や製造上の欠陥による薬害などの商品の安全性の問題
- 悪質商法…消費者が本当は買うつもりがないのに、言葉巧みにだまして価値のないものや不要なものを購入させる商法。消費者の自由な商品選択をさまたげる誇大広告や不当表示
- 価格の操作・管理の問題…再販売価格維持制度、価格カルテルなどによる
- 多重債務や自己破産…クレジットカードや消費者金融による
など。
1962年、アメリカ合衆国のケネディ大統領は、特別教書で消費者の4つの権利として、
- 安全を求める権利
- 知らされる権利
- 選択できる権利
- 意見を反映させる権利
を示し、その後の世界の消費者保護に大きな影響を与えた。
商品を提供する企業に対しては、安全な商品を提供する責任と、商品に対する公正な説明責任(アカウンタビリティ)が要求されている。
インターネットの普及とともに、利用していないのに料金を請求される架空請求の苦情なども急増しており、消費者は新しい事態への対応もしなければならなくなっている。
環境にやさしい生活をめざすグリーンコンシューマとして、 消費生活のあり方も問われており、エコマーク入りの商品を購 入するなどの取組みが求められている。 生活の利便性・快適性だけを求めた従来の生活スタイルを見直し、消費生活のなかで、無駄に消費されるものについても考え直すことが必要である。
日本の社会保障制度
日本でも第二次世界大戦後、憲法第25条で生存権が保障され、
- 社会保険
- 公的扶助
- 社会福祉
- 公衆衛生
の4つを柱とした社会保障制度が整備された。
経済のソフト化
コンピュータを利用したインターネットの普及でIT革命が進展したことにより、時間的・空間的な距離が縮まり、経済の面でも大きな変化が生まれている。企業では、製品をホームページにのせて宣伝や販売をしたり、企業内のパソコンを結びつけて会議を減らしたり、事務処理や意思決定、消費者の苦情への対応のスピードアップ化をはかって、ビジネスチャンスを逃さないように努力している。
知識集約型産業の発達にともなって、特許権や著作権、ブランドなどの知的財産権(知的所有権)の価値が高まり、それらを利用して収益をあげる動きもある。
商業分野では、POS(販売時点情報管理)システムの導入により在庫管理が合理化された。
その一方で従来の食料品店や洋品店、雑貨店といった小売店は減少している。銀行のキャッシュカードコーナーが夜間も営業するようになったり、コンビニでお金の振込みができるようになったり、カードや携帯電話を利用した決済も増えてきている。
製造業部門では、アジアNIESや中国からの安価な製品の輸入が増加し、製造部門が海外に移転した結果、国内では知識集約型製品の生産や研究開発部門の比重が上昇するなど、経済のソフト化が進んでいる。
家庭でもインターネットや携帯電話が普及し、電子商取引やインターネットを利用して、直接海外に商品を発注することもできるようになった。銀行や証券会社でもインターネットを通じてサービスを利用することが増えている。
最近進みつつある経済のサービス化・ソフト化には、コンピュータの発達に基づくIT革命(社会の情報化)が 大きな影響を与えている。
国民所得
今日、政府の経済政策の大きな目標とされる国民の福祉を実現するためには、経済成長と景気や物価の安定が必要である。経済成長や景気変動、物価など、経済のファンダメンタルズ (基礎的条件)の状況を示す指標には、国民総生産(GNP)や国民所得、 鉱工業生産指数、失業率、物価指数などがある。
国民総生産(GNP)
国民総生産(GNP)とは、国民が1年間に新たに生産したモノやサービスの付加価値の合計額のことで、国民経済の大きさ の指標として用いられてきた。国民総生産から工場や機械などの固定資本減耗分(減価償却費)を差し引いたものを、国民純生産(NNP)という。減価償却費は、生産のために使用された 工場・機械などが年々古くなったり、傷んだりしていくのを新しいものに切り替えるための費用のことである。国民所得 (NI)は、国民純生産から間接税を引き、補助金を加えて求められる。
国民総生産では、海外にある日本企業が生産した価値の額は計算に入れられているが、日本国内にある外国企業が生産した価値の額は入れられてはいない。
国内総生産(GDP)
経済の国際化が進展してきた今日では、国民総生産から海外からの純所得(外国からの所得の受取-外国に対する所得の支払)を差し引いた国内総生産(GDP)が、新たな経済活動の指標として使用されるようになっている。
国民総生産・国内総生産は、生産・分配・支出の3つの国民 所得面からとらえられ、それぞれの総額は等しくなる(国民所得の三面等価)。生産国民所得は、第一次産業・第二次産業・ 第三次産業に分かれ、その構成からその国の産業構造の発展段階などを知ることができる。
日本は、今日では第三次産業の割合が70%を超え、経済のサービス化が進展している。
- 分配国民所得は、賃金などの雇用者所得や利潤などの企業 所得、利子や地代などの財産所得から構成され、雇用者所得が60%を超えている。
- 支出国民所得は、家計の消費支出などの民 間最終消費支出、政府最終消費支出、企業の設備投資や政府の公共投資などの国内総資本形成、経常海外余剰からなるが、民間最終消費支出が55%を超えており、景気の動きに家計の消費支出の動向が大きな影響を与えている。
GDPは市場で取引された財やサービスを合計したもので、公害を発生させる産業活動や環境破壊をもたらす開発、人の健康をむしばむ病気治療のための医療費、家庭での生活時間を犠牲にした長時間労働や長時間通勤など、国民の福祉にはマイナスであることでも、計算には含まれてしまっている。
国民純福祉(NNW)とグリーンGDP
家庭生活に欠かせない家事労働や、お金を使わないが人びとの生活に潤いを与える公園の散策、無償のボランティア活動などはGDPの計算に入っていない。 そこで、新たな観点から国民の福祉水準をはかる指標として、 環境汚染や都市化による損失、家事労働や余暇時間なども数量化して計算した国民純福祉(NNW)やGDPから環境悪化を 防ぐための経済活動費用を差し引いたグリーンGDPなどの指標も取り入れられるようになっている。
インフレとデフレの定義
- インフレーション(インフレ)…物価水準が持続的に上昇(価格上昇=商品が高くなる)する状態
- デフレーション(デフレ)…物価水準が持続的に下落する状態
インフレの大前提は、国内の通貨量が増えるということです。つまり、マネー・サプライ(通貨供給量)が増加するということです。これが原因でインフレが起こります。
マネー・サプライ(通貨供給量)が増加する→通貨価値が下がる→商品が値上がりする。お金が増えたことによって、希少性が失われ、価値が下がり、同じものを買うときにも、たくさんのお金が必要になります。結果的に、物価が上がっているということです。
原因を排除することになりますから、マネー・サプライ(通貨供給量)を減らすことになります。
- 通貨を刷ることをやめる
- 金融引き締め…銀行がお金を貸すのをやめる(貸出抑制)・貸出金利の引き上げ
- 財政政策…増税をする
- 輸入促進…海外に対して支払いをするので、国内の通貨量が減る。
論理的には、「不平等な所得分配が実現されます」。持てる者が有利になり、持たざる者が不利になります。たとえば、持てる者(資産家)は、土地や株、金、絵画などの資産をもっているわけですが、インフレ状況下においては、モノが値上がりしているので、所有しているだけでその価値は上がっていることになります。
一方で、持たざる者(サラリーマンなど)は、インフレでは、通貨価値が下がっているわけですから、月給や貯金の価値は下がっています。購買力が減るということを意味します。たとえば、月給50万円をもらっていても、インフレで物価が2倍になっていれば、50万円は、その半分の25万円ということになります。これまでの半分しかモノが買えなくなっている状況です。
インフレの状況下では、お金で生活をしている人は苦しく、資産(土地、株など)を持っている人は儲かるという不平等な事態が起こります。
インフレになると通貨価値の下落により、借金の価値も低下します。これが、債務者利得です。債務者というのは、借金を抱えた返す義務のある人のことです。お金を借りた人が有利になります。これは、同時に債権者損失が発生することを意味します。債権者とは、お金を貸した人のことです。貸した人は、資金の価値が減ってしまって不利だということです。
インフレの程度による分類は、
- ハイパー・インフレ…超インフレ
- ギャロッピング・インフレ…かけ足のインフレ
- グリーピング・インフレ…しのびよるインフレ
と3つに分類できます。
通貨制度
物価の安定や景気の調整をはかりやすくするためには、通貨当局(政府および中央銀行)が国内流通通貨量を、政策的、裁量的に自由に決定できる制度が必要です。つまり、マネー・サプライ(通貨供給量)を管理することが、今日の金融政策の中心となっています。このように、自由に通貨量を調節できる制度を管理通貨制といいます。
地球環境問題
環境問題は、日本だけの問題ではなく、地球全体の問題になっている。
石油や石炭などの化石燃料の使用によって排出される二酸化炭素(CO)が増加し、地球的な規模の気温上昇
そのため海面が上昇して水没する地域が生まれたり、巨大ハリケーンなどの異常気象が生じたり、地域によっては砂漠化を促進したりしている。気象の変化が地域の植生を変え、生態系全体の変化をもたらしている。
国際的な取り組み<
- ワシントン条約…絶滅のおそれのある野生生物の輸出入を規制する条約
- セリーズ(バルディーズ)の原則…タンカー事故などによる海洋汚染には民間業が環境保全に責任を持つという原則
- バーゼル条約…有害廃棄物の輸出入を禁止した条約
など。
南北問題
第二次世界大戦後、アジア・アフリカなどで植民地支配から 独立する国々があいついだ。これらの国々は地球の南半球に多い。政治的に独立しても、国内には食糧や日用品など、国民の最低限の需要をまかなう産業が未発達であった。しかも、輸出農産物価格は低くおさえられ、先進工業国との経済格差が固定化した。
このような、南にある発展途上国と北にある先進工業国との経済格差による諸問題を南北問題という。
発展途上国間でも、産油国や新興工業経済地域 (NIES)とよばれる工業化に成功した国や地域を除いては、 順調な経済発展は実現できていない。とくに後発発展途上国 (LDC)とよばれる飢餓や貧困に苦しむ国は、政治的にも不安定になりやすく、その結果、国民の人権保障が実現されにくくなり、国際社会の不安定要因となっている。
このような、産油国やNIES諸国と後発発展途上国との発展途上国間での経済格差による諸問題を、南南問題という。
- 後発発展途上国 (LDC)…2003年に国連で改訂された基準によると1人あたりの年間所得が750ドル未満で、識字率や工業化率の低い国をさしている。
- 最貧国(MSAC)…2005年2月現在、開発援助委員会は、アフリカ34カ国、アジア10カ国を含む合計50カ国を認定している。
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