小型原子炉(SMR:Small Modular Reactor)は、次世代のエネルギーインフラとして世界的に注目を集めている。従来の大型原発に比べて安全性・コスト・柔軟性に優れるとされ、脱炭素社会の実現とエネルギー安全保障の両立を担う存在として期待が高まっている。
特に日本においては、エネルギー自給率の低さや電力供給の安定性が課題となる中、SMR技術への関心が急速に高まっている。政府や大手企業による開発投資・国際連携も進み、関連企業のビジネス機会は拡大しつつある。
本記事では、小型原子炉(SMR)分野で注目される日本株を投資視点でわかりやすく解説する。次世代エネルギー市場の成長を捉えるヒントとして、ぜひ参考にしてほしい。
小型原子炉(SMR)関連株とは?注目される理由と成長の背景

小型原子炉(SMR:Small Modular Reactor)関連株とは、次世代型の原子力発電技術であるSMRの開発・製造・運用、またはそのサプライチェーンに関わる企業の株式を指す。従来の大型原発に比べて小型・モジュール化されている点が特徴であり、建設コストの低減や工期短縮、安全性の向上といったメリットが期待されている。
近年、SMRが注目される背景には「脱炭素」と「エネルギー安全保障」という2つの大きなテーマがある。再生可能エネルギーは天候に左右されやすく安定供給に課題がある一方、SMRは安定的に電力を供給できるベースロード電源としての役割が期待されている。特に資源に乏しい日本にとって、エネルギー自給率の向上は重要な政策課題であり、原子力の再評価が進む中でSMRへの関心が高まっている。
また、SMRは大型原発と比べて設置の柔軟性が高く、地方分散型の電源としても活用が見込まれる。さらに、水素製造やデータセンター向け電源など新たな用途も期待されており、単なる発電技術にとどまらない広がりを持つ点も投資テーマとしての魅力である。
株式市場においては、SMRは「次世代エネルギー」「国家戦略」「インフラ投資」といった複数の成長テーマが重なる分野である。このため、関連企業は中長期的に成長ストーリーを描きやすく、テーマ株として資金が流入しやすい特徴を持つ。
今後は、各国での実証プロジェクトの進展や商用化のタイミングが株価の重要なカタリストとなる。開発企業だけでなく、部材・設備・建設・運用など幅広い企業に恩恵が波及する点も、SMR関連株の大きな魅力といえる。
三菱重工業(7011)

重電・防衛・エネルギー分野で日本を代表する総合機械メーカー。次世代原子炉(高温ガス炉やSMR)開発を推進し、水素製造との連携など新エネルギー戦略の中核を担う存在である。原子力分野の技術力は世界トップクラスで、国策テーマとの親和性も高い。防衛・脱炭素の両輪で成長が期待される中、SMRは中長期の成長ドライバーとして位置付けられ、テーマ性・実力ともに本命株といえる。
・2020年12月に一体型小型原子炉の概念設計を完了。2021年1月に出力30万kW以下のSMR概念設計完了を発表し、実用化開発を推進。
・軽水小型炉・高温ガス炉・マイクロ炉(コンテナ輸送可能な超小型炉)の3種を「将来炉」と位置付け開発中。
・原子炉の開発から製造・運転・保守まで一貫したサービスを提供できる国内唯一の総合プラントメーカー。
日立製作所(6501)

IT・インフラを融合したグローバル企業であり、原子力分野ではGEとの合弁を通じてSMR事業を展開。カナダなど海外でのSMR受注実績もあり、商用化に最も近い日本企業の一角とされる 。デジタルとエネルギーの融合による「グリーン戦略」を掲げており、安定収益と成長性を兼ね備える。SMRの普及が進めば長期的な収益拡大が期待できる中核銘柄である。
・GEベルノバと共同開発する「BWRX-300」(300MW沸騰水型SMR)が2025年5月、北米初のSMRとしてカナダ・ダーリントンで建設開始が発表された。
・米TVAやポーランドSynthos等でも採用候補として検討が進み、グローバル展開が加速中。
・炉内構造物・改良型制御棒駆動機構・制御棒駆動水圧ユニット等の主要機器を自社供給できる一貫体制。
IHI(7013)

重工メーカーとして航空エンジンやエネルギー設備を手がけるほか、米国のSMRベンチャーへの参画などを通じて次世代原子力分野にも関与 。原子炉周辺機器やプラント技術での強みを持ち、サプライチェーンの中核企業としての役割が期待される。航空・防衛に加えエネルギー分野の成長が見込まれる中、SMR関連の進展が評価されれば株価の再評価余地もある。
・米ニュースケール・パワーに国際協力銀行を通じて出資(2022年)し、SMR事業に参画。EPC事業への進出を視野に人材を派遣。
・ニュースケールのSMRプラント「VOYGR」向けに格納容器の製造・検査技術の開発を担当。
・高強度特殊材料を用いた新溶接技術の研究を推進し、品質確保と施工性を両立する技術力を蓄積。
日揮ホールディングス(1963)

エンジニアリング大手で、LNGや石油化学プラントに強みを持つ。SMR分野では、モジュール化技術や建設プロジェクトのノウハウを活かし、実証や関連技術開発に関与 。エネルギー転換の流れの中で、水素・再エネ・原子力と幅広い分野に関わる点が強み。SMRの普及が進めば建設需要の拡大が見込まれ、中長期での受注増加が期待される。
・2021年4月、米ニュースケール・パワーに出資し、SMRプラントのEPC事業参入を目指す。IHIとともに人材を派遣し知見を蓄積。
・石油・ガスプラントで培った設計・調達・建設(EPC)のノウハウをSMR建設に応用できる強みを持つ。
・国際協力銀行経由の出資によりニュースケール株式を取得し、SMRの普及に向けた事業基盤を構築。
富士電機(6504)

発電・電力機器に強みを持つ電機メーカーで、原子力発電関連機器や制御システムを手がける。SMRにおいても電力変換・制御分野での関与が期待される。パワー半導体事業の成長に加え、エネルギーインフラ分野の拡大が追い風となっている。SMRの普及は電力機器需要の増加につながるため、間接的ながら安定した成長が見込める銘柄である。
・既存の原子力発電所向け制御・計測システムの豊富な納入実績を持ち、SMR向け制御・計装システムへの転用が期待される。
・タービン発電機・変圧器・遮断器など発電設備のフルラインナップをSMRにも供給できる体制。
・パワー半導体(SiC等)の高度化により、SMRと組み合わせた次世代電力変換技術でも競争力を持つ。
東海カーボン(5301)

炭素製品大手で、原子力用途の黒鉛材料などを供給。SMRを含む次世代原子炉では高性能材料の需要が高まると見込まれており、素材メーカーとしての恩恵が期待される。半導体・電池材料など成長分野も抱えており、複数テーマにまたがる点が強み。市況の影響は受けやすいが、原子力回帰の流れは中長期的な需要増加要因となる。
・高温ガス炉(HTR/HTGR)型SMRでは炉心材として黒鉛材料が不可欠であり、高品質な等方性黒鉛の製造技術は希少性が高い。
・原子力向けファインカーボン・等方性黒鉛の製造実績を持ち、次世代SMRの炉心材サプライヤーとして期待される。
・半導体製造向け等の高純度黒鉛技術を原子力転用できる技術基盤を保有。
東洋炭素(5310)

高機能カーボン製品で世界的シェアを持ち、原子力や半導体用途で使用される特殊黒鉛を供給。SMRにおいても耐熱・耐放射線材料としての需要拡大が期待される。高付加価値製品が多く収益性が高い点が特徴。ニッチながら成長市場に深く関与する企業であり、SMR普及による恩恵を受けやすい中小型の成長株といえる。
・日本原子力研究開発機構(JAEA)の試験炉「HTTR」、中国の「HTR-10」「HTR-PM」など原子炉向けへの黒鉛材料の納入実績がある。
・2024年、フランスのJimmy Energy社より高温マイクロ原子炉(HTR)向け黒鉛製品を受注。2026年の出荷に向け準備中で、SMR分野への直接貢献が実現。
・等方性黒鉛の高い均質性・耐熱性は次世代高温ガス炉型SMRの炉心材として最適。
伊勢化学工業(4107)

ヨウ素関連製品で世界トップクラスのシェアを持ち、原子力分野でも利用される重要素材を供給。SMRにおいても放射性物質管理や関連技術での需要が見込まれる。資源系銘柄として市況の影響を受けるものの、ニッチトップとしての競争優位性が高い。エネルギー安全保障の観点からも注目されやすく、テーマ株としての側面を持つ。
・ヨウ素(I)は高温ガス炉型SMRを活用したカーボンフリー水素製造プロセス「ISプロセス(ヨウ素-硫黄サイクル)」の主要原料として重要。
・JAEAが世界初の連続水素製造に成功したISプロセスではヨウ化水素(HI)が中核反応に用いられ、ヨウ素の安定供給が不可欠。
・ヨウ素の国内トップサプライヤーとして、SMR×水素製造のエコシステム拡大の恩恵を受ける希少性の高い立ち位置。
助川電気工業(7711)

原子力向け計測・制御機器を手がけるニッチ企業。原子炉内の温度・圧力などを計測する技術に強みを持ち、安全性が重視されるSMRにおいて重要な役割を担う。大型案件に業績が左右されやすいが、原子力関連投資が再開されれば業績拡大のインパクトは大きい。テーマ性の強い中小型株として、値動きの大きさも含め注目される銘柄である。
・原子力発電機器に強みを持ち、液体ナトリウム用途拡大の研究・液体リチウム/溶融塩関連機器の開発を推進。高速炉型SMRに関連する技術基盤を持つ。
・2021年4月、量子科学技術研究開発機構(QST)から核融合装置JT-60SAダイバータカセットを約3.7億円で受注。次世代炉への技術対応力を証明。
・原子力関連ニュースへの株価感応度が高く、SMRテーマの象徴銘柄として市場で注目される出遅れ小型株。
関西電力(9503)

西日本を代表する電力会社であり、原子力発電の運用実績と技術基盤を有する。SMRに関しては直接的な開発主体ではないものの、将来的な導入主体としての位置付けが強く、エネルギー安全保障の観点から重要な役割を担う。既存原発の再稼働による収益改善に加え、次世代原子炉への期待も株価の中長期的な支援材料となる。電力需給の安定化と脱炭素の両立を背景に、SMR普及局面では再評価余地があるディフェンシブ銘柄である。
・既存PWR炉の保有・運営で培った豊富な原子力オペレーション経験を持ち、SMR導入・運営の有力プレーヤーとして期待。
・中部電力とともにニュースケール株式取得への関与が進んでおり、SMRの調達・運用側の重要プレーヤー。
・電力安定供給とカーボンニュートラル達成のためSMRを次世代ベースロード電源として積極的に位置付け、研究開発を推進。
まとめ|小型原子炉(SMR)関連株は「国家戦略×技術力」で選ぶ成長テーマ
小型原子炉(SMR)関連株は、「脱炭素」「エネルギー安全保障」「次世代インフラ」という複数の国家レベルのテーマが重なる中長期の成長分野である。今回取り上げた10社も、その役割ごとに分けて整理することで、より投資戦略が明確になる。
まず中核となるのが、三菱重工業、日立製作所、IHIといった“開発・プラント系企業”である。これらはSMRの技術開発や海外展開の中心を担う本命銘柄であり、テーマの進展が最もダイレクトに業績へ反映されやすい。
次に、日揮ホールディングスや富士電機は“エンジニアリング・設備系”として、建設や電力制御といった分野で関与する中核銘柄である。SMRの普及に伴い、安定的な受注拡大が期待できるポジションにある。
さらに、東海カーボン、東洋炭素、伊勢化学工業は“素材・部材系”として、原子炉に不可欠な高機能材料を供給する。ニッチながら高い競争力を持ち、SMRの拡大とともに着実な成長が見込まれる分野である。
加えて、助川電気工業のような“計測・安全関連”は、原子力の安全性を支える重要領域であり、投資再開局面では大きな成長余地を秘める。
そして、関西電力は“運用主体(電力会社)”として、将来的なSMR導入の担い手であり、実装フェーズにおいて重要な役割を果たす存在である。
このようにSMR関連株は、「開発→建設→部材→運用」と幅広いサプライチェーンで構成されている。短期的にはテーマ性による株価変動が大きい一方で、中長期では各企業の技術力やポジションが問われる。したがって、単なるテーマ株としてではなく、「どの領域でどの役割を担う企業か」を見極めながら投資判断を行うことが、SMR関連株で成果を上げるための重要なポイントである。
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