資源価格の高騰や地政学リスクの高まりを背景に、「都市鉱山」が改めて注目されています。
都市鉱山とは、使用済みのスマートフォンや家電、自動車部品などに含まれる金・銀・銅・レアアースといった貴重な資源を再回収する取り組みのことです。日本は天然資源に乏しい一方で、都市に眠る金属資源の蓄積量は世界有数ともいわれています。
特にEV(電気自動車)や再生可能エネルギーの普及が進む中で、レアメタルの安定確保は国家戦略レベルの重要テーマとなっています。その中核を担うのが、リサイクル技術や非鉄精錬技術を持つ日本企業です。
本記事では、
・都市鉱山関連株とは何か
・なぜ今注目されているのか
・日本国内で注目される本命株・中小型株10選
を分かりやすく解説します。
中長期投資テーマとしての可能性も含めて、投資視点で整理していきます。
都市鉱山関連銘柄とは?なぜ今、日本株で注目されているのか

都市鉱山とは、使用済みのスマートフォンやパソコン、家電、自動車、産業機器などの廃製品に含まれる金・銀・銅・パラジウム・リチウム・コバルト・レアアースなどの有価金属を「資源」として再回収する取り組みを指します。天然の鉱山とは異なり、“都市に眠る資源”を掘り起こすことからこの名が付いています。
日本は天然資源に乏しい一方で、電子機器の普及率が高く、蓄積された金属資源量は世界有数といわれています。特に金やレアメタルの潜在量は、世界トップクラスとの試算もあり、資源安全保障の観点からも重要性が高まっています。
注目が加速している背景には、主に三つの要因があります。
第一に「資源価格の高騰」です。銅やニッケル、リチウムなどはEV(電気自動車)や再生可能エネルギー設備に不可欠であり、世界的な脱炭素の流れの中で需要が拡大しています。新規鉱山開発には時間とコストがかかるため、既存資源の再利用価値が相対的に高まっています。
第二に「地政学リスク」です。レアメタルの供給は特定国に偏在しているケースが多く、国際情勢の変化が供給不安に直結します。国内で資源を循環させる都市鉱山は、経済安全保障上の重要テーマとなっています。
第三に「環境規制の強化」です。カーボンニュートラル実現に向け、資源採掘に伴う環境負荷を抑える動きが加速しています。リサイクルによる金属回収は、CO₂排出削減にもつながるため、ESG投資の観点からも評価されやすい分野です。
株式市場においては、非鉄金属精錬企業、貴金属リサイクル企業、電子スクラップ処理企業、EV電池リサイクル関連企業などが都市鉱山関連銘柄として位置づけられます。資源市況に業績が左右されやすい側面はあるものの、長期的には「資源循環」という国家戦略テーマと結びつく点が大きな魅力です。
つまり都市鉱山関連株は、
「資源高メリット」
「EV・脱炭素需要」
「経済安全保障」
という複数の成長軸を内包するテーマ株といえます。
こうした追い風を受ける日本国内の注目企業10社を、投資視点で詳しく解説していきます。
三菱マテリアル(5711)

非鉄金属の大手で、銅・アルミ・貴金属製品の製造に加えてスクラップから金・銀・銅などの再資源化リサイクル事業も展開。都市鉱山由来の金属回収・精錬能力を持ち、世界的な資源高・リサイクル需要の追い風が期待される。安定した事業基盤を持つ大型株で、テーマ性とバリュー株的な側面を併せ持つ点が投資妙味。
直島製錬所など国内精錬拠点で電子スクラップから金・銀・銅・白金族を高効率回収する技術を保有。特許分析でも金・銀・銅の回収技術に高評価特許を多数有し、リサイクル原料の受け入れ体制が整備されている。銅精錬の副産物として貴金属を一括回収できる一貫処理が強み。
DOWAホールディングス(5714)

非鉄金属精錬・リサイクル中心の老舗企業。環境・リサイクル部門では電子機器廃棄物からの貴金属・希少金属回収、非鉄リサイクルに強みがあり、資源循環型社会への移行というテーマ性に合致。比較的安定した収益構造と配当も魅力。
子会社DOWAエコシステムが家電・自動車・電子部品スクラップから金・銀・銅などを回収し、独自精製技術によって純度99.995%以上の高純度金を生産できる。リサイクル原料の種類・形態に応じた最適処理を提案するエコシステムが競合他社との差別化要因。特許力でも業界上位を維持。
アサカ理研(5724)

リサイクル企業でプリント基板等から金・プラチナ等を回収する「都市鉱山」事業を核に展開。近年ではリチウム電池からのリサイクルやEV電池関連素材の循環事業へも投資を強化している。中小型株のテーマ株として値動きが出やすい点が投資妙味。
独自の溶媒抽出法により、大手が敬遠する低品位スクラップからも効率的に金・銀・白金・パラジウムを回収できる点が最大の差別化要因。先端部品スクラップや使用済み治具の再生にも対応し、ニッチ市場での高い参入障壁を確立。小型株ゆえに業績連動した株価妙味も高い。
東邦亜鉛(5707)

亜鉛・鉛・銀等の非鉄金属製造・精錬を展開し、製錬工程で発生する副産物や廃棄物からの金属回収にも注力。金属価格の上昇局面では収益改善の恩恵が大きい。都市鉱山関連としては再資源化・精錬技術の強みからテーマ株入り。
廃バッテリー・廃電子基板から鉛・銀・インジウムを回収する技術を持ち、都市鉱山由来の二次原料処理能力が高い。インジウムはフラットパネルディスプレイの不可欠材料であり希少性が高く、リサイクルによる国内調達の付加価値は大きい。亜鉛精錬時の副産物として複数の有価金属を効率的に回収できる体制が整う。
三井金属鉱業(5706)

非鉄金属メーカーとして銅やニッケル等を扱い、バッテリー材料・リサイクル技術を持つ。都市鉱山関連株として金属リサイクル・資源循環の事業ポテンシャルが評価される。大型業績基盤にテーマ性が加わる投資妙味。
特許分析でニッケル・コバルト回収技術に強みが確認されており、廃リチウムイオン電池からのレアメタル回収で競争力を有する。EV普及に伴い電池スクラップが急増する局面での恩恵が大きく、銅箔製造とリサイクル原料供給を結びつけた循環型バリューチェーンの構築も進める。
帝人(3401)

素材企業で複合材料・リサイクル事業も推進。炭素繊維に加え、使用済製品からの素材再生にも注力しており、都市鉱山テーマと結びつく成長性が期待される。循環型素材技術への投資余地が評価ポイント。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のリサイクル技術開発に注力し、廃材から炭素繊維を高品質で再生する循環型素材ビジネスを推進。「素材都市鉱山」とも言える使用済みCFRPを再原料化することで、希少な炭素繊維資源の国内循環を実現する先進的なポジションを占める。次世代モビリティとの親和性が高い。
JX金属(5016)

非鉄金属製造だけでなく、廃棄物・低品位原料を処理するリサイクル拡大に投資。資源循環・低コスト原料活用の観点から注目される。上場後のテーマ性を先取りする戦略的投資妙味。
銅精鉱とリサイクル原料の両方を原料とする「グリーンハイブリッド製錬」を推進し、都市鉱山由来のスクラップから銅・貴金属・レアメタルを一括生産する体制を確立。金属回収の特許総合力で業界トップ評価を得ており、多品種のレアメタル回収技術に高評価特許を多数保有。情報通信材料の増販と組み合わせ、リサイクル原料の付加価値を最大化する戦略を展開。
伊勢化学工業(4107)

化学品・機能材料メーカー。都市鉱山関連として直接的なリサイクル事業より、電子材料や機能部材の需要増に伴う希少金属素材の供給網強化がテーマになる可能性がある。利益成長期待を評価する投資妙味。
使用済みヨウ素の回収・再利用システムを確立し、レアな国産資源であるヨウ素の循環型サプライチェーンを構築。また、スクラップを原料とする塩化ニッケル製造技術は電子部品産業を支える希少な国内供給源。ヨウ素・ニッケルともに中国依存リスクを低減できる「国産リサイクル資源」として戦略的価値が高い。
アルコニクス(3036)

コイル材・精密鋼板メーカーで金属製品の加工・リサイクルにも関与。都市鉱山関連テーマ株としては金属需要全般の追い風に乗りやすい。中小型株として値動きが出やすい点が魅力。
レアメタル・レアアーススクラップの専門流通網を国内外に持ち、循環型社会に向けたリサイクル拠点の拡張を推進中。鉱石から地金・中間原料まで一貫処理できる子会社体制を活かし、電子機器スクラップから希少金属を効率的に回収・流通させる川上から川下までのバリューチェーンを形成。半導体・EV関連の特殊金属需要増も追い風。
中外鉱業(1491)

非鉄金属・レアメタル関連企業。電子スクラップ由来の金属回収や希少金属採掘・販売事業にも関わり、都市鉱山関連株としてテーマ性を持つ。小型株でありボラティリティの高さと成長期待が投資妙味。
国内発生原料の貴金属リサイクルに特化した精錬技術を強みとし、金・白金族の集荷量は堅調に拡大。金価格の高騰局面では精錬処理量の増加が直接的に業績を押し上げる構造。小規模ながら高い工場稼働率を維持し、宝飾品リユース事業とも連動したスクラップ回収ネットワークが独自の調達力を生む純粋な都市鉱山プレーヤー。
まとめ|都市鉱山関連株は“業界ポジション”で選ぶのが鍵
都市鉱山関連銘柄は一括りにされがちですが、実際には業界ポジションによって値動きや成長ドライバーが大きく異なります。投資判断では「どの分野の企業なのか」を整理することが重要です。
■ 総合非鉄・大手精錬グループ(市況連動+安定基盤)
三菱マテリアル(5711)
DOWAホールディングス(5714)
三井金属鉱業(5706)
東邦亜鉛(5707)
これらは都市鉱山の“中核”を担う精錬・リサイクル大手です。金属価格上昇の恩恵を受けやすい一方、事業基盤が広く景気耐性も比較的高いのが特徴。テーマ性と安定性を両立させたい投資家向きのセクターといえます。
■ 貴金属・電子スクラップ特化型(テーマ性+値動き)
アサカ理研(5724)
中外鉱業(1491)
電子基板や貴金属スクラップからの回収に強みを持つ企業群。材料価格やテーマ報道で株価が動きやすく、中小型株らしいボラティリティと成長期待が魅力です。短中期のテーマ投資にも適しています。
■ 素材・機能材料グループ(EV・次世代材料連動)
帝人(3401)
伊勢化学工業(4107)
アルコニックス(3036)
直接的な都市鉱山事業だけでなく、リサイクル素材や希少金属を活用する次世代材料分野に強みを持つ企業群。EV・半導体・電子部品市場の拡大と連動するため、成長産業への波及効果を狙う投資戦略が有効です。
■ 非鉄・資源循環強化企業(供給網戦略)
JX金属(5016)
資源循環型ビジネスの強化を進める非鉄大手。リサイクル原料の処理能力拡大は、経済安全保障の観点からも注目材料です。国家戦略テーマとの連動性が評価ポイントとなります。
■ 結論:短期テーマか、中長期構造変化かで選ぶ
都市鉱山関連株は、
・金属市況に連動する「景気循環型」
・EV・脱炭素に連動する「成長テーマ型」
・経済安全保障に連動する「政策テーマ型」
という複数の側面を持ちます。
短期の資源高を狙うのか、それとも資源循環という長期構造変化に賭けるのか。業界ポジションを整理した上で銘柄を選別することが、都市鉱山投資の最大のポイントといえるでしょう。
今後もEV普及や資源ナショナリズムの高まりが続く限り、都市鉱山関連は中長期テーマとして市場で語られ続ける可能性があります。
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