近年、日本では「国土強靭化政策」や「物流網の再構築」を背景に、港湾整備への投資が再び注目を集めています。
老朽化した港湾インフラの更新、防災・減災対策の強化、さらには国際競争力を高めるための大規模再開発――。
港湾は単なる海の玄関口ではなく、日本経済を支える“物流の要”です。
コンテナ取扱量の増加、洋上風力発電の拠点整備、防衛関連の戦略港湾強化など、成長テーマが複合的に絡み合っています。
本記事では、港湾整備関連の日本株10選を厳選。
建設会社、浚渫(しゅんせつ)企業、重機メーカー、海洋インフラ企業など、分野別にわかりやすく解説します。
「どの銘柄が本命か?」
「長期投資で狙える企業はどこか?」
投資戦略のヒントになる視点とともに、港湾整備テーマの将来性を読み解きます。
なぜ今、港湾整備関連株が注目されるのか?|国土強靭化と物流再編の本質

「港湾」は、日本経済の静かな大動脈である。
普段、私たちは港の存在を意識することは少ない。しかし、日本の貿易量の大半は海上輸送によって支えられている。エネルギー、食料、工業製品、半導体材料——それらはすべて港を経由する。港湾機能が止まれば、日本経済は即座に停滞する。
いま、この港湾インフラに大きな転換期が訪れている。
第一の理由は「国土強靭化」である。
南海トラフ地震や首都直下地震リスクが高まるなか、岸壁の耐震補強、護岸整備、老朽化インフラの更新は待ったなしの状況だ。単なる景気対策ではなく、“国家の安全保障”としての公共投資が続く可能性が高い。
第二の理由は「物流再編」である。
コンテナ大型化、港湾の国際競争力強化、物流効率化、自動化ターミナルの導入。加えて、洋上風力発電の拠点港整備など、新たな需要も生まれている。港湾はもはや「荷物を積み下ろす場所」ではなく、エネルギー・産業戦略の要となっている。
第三に、「地政学リスク」である。
サプライチェーンの分断が現実化する中、日本は“自前の物流強化”を迫られている。特定港湾の高度化や分散化は、中長期テーマとして継続する可能性が高い。
投資視点で見ると、港湾整備は一過性のテーマではない。
防災、エネルギー、物流、安全保障という複数の政策軸にまたがる“複合テーマ”である点が重要だ。
だからこそ、海洋土木(マリコン)、重機メーカー、港湾物流、インフラ資材企業など、裾野は広い。
「派手さはないが、消えない需要がある」
それが港湾整備関連株の本質である。
次章では、こうした構造変化の中で注目される具体的な本命銘柄10社を見ていく。
五洋建設(1893)

五洋建設(1893)は、海洋土木・港湾整備工事を得意とする老舗のゼネコンです。港湾の岸壁工事・埋立・浚渫(しゅんせつ)などを国内外で手掛け、インフラ整備の核となる事業領域を有しています。国土強靭化や防災・災害対策、クルーズ船受入環境整備といった公共投資案件が追い風です。海外案件の受注や設備投資、持続可能な建設技術の開発によって成長余地があり、景気循環を乗り越える中長期投資妙味が見られます。
・海洋土木最大手
・浚渫技術トップクラス
・洋上風力発電施工
港湾工事における圧倒的な施工実績と技術力を誇る。特に大型港湾工事の実績が豊富で、防災・減災対策や防衛関係インフラ整備において重要な役割を担う。洋上風力発電施設の建設技術も有し、脱炭素社会の実現に貢献。
東亜建設工業(1885)

東亜建設工業(1885)は、海岸・港湾土木工事を中心に手掛ける専門建設企業で、護岸工事や堤防整備なども強みです。特に国土強靭化関連の受注が堅調で、決算では利益改善傾向が確認されています。国土交通省のインフラ投資計画に伴い、これまでの技術力を生かして受注拡大が期待され、業績の安定成長が見込まれる点が投資妙味です。港湾関連だけでなく災害対策分野への需要も追い風となります。
・海洋土木技術
・港湾・空港整備
・海外展開力
海上土木分野を中心に港湾・空港のインフラ整備で高い技術力を発揮。防災・減災、国土強靭化対策、防衛関連のインフラ整備に積極的に取り組む。海外市場では東南アジアを中心に展開し、グローバルな港湾整備プロジェクトに参画。
上組(9364)

上組(9364)は、港湾総合物流を主力とする企業で、港湾での荷役・物流サービスに加えて陸上物流・倉庫事業も展開します。モーダルシフトや国際物流効率化の流れを受け、物流ネットワーク強化が進行中です。港湾インフラ整備と連動した物流需要の増加は、中長期的な成長シナリオを描く上で魅力です。堅実なキャッシュフローと安定配当も投資家にとって魅力となります。
・6大港シェア1位
・総合物流サービス
・港湾荷役トップ
国内主要港での圧倒的な取扱実績により、港湾物流の中核を担う。コンテナターミナル運営の競争力が高く、港湾施設の効率的な利用を実現。重量貨物運搬据付業にも強みを持ち、港湾インフラ整備に不可欠な存在。
山九(9065)

山九(9065)は陸運・海上輸送・港湾運送を手掛ける物流大手です。港湾クレーン運用やターミナル物流、工場内物流システムなど多角的な物流インフラサービスに強みがあります。国際貿易量の回復や港湾機能強化に伴い、物流需要は底堅く推移する見通しです。多様な収益源に支えられる安定性と配当利回りは投資妙味のポイントです。
・港湾物流ネットワーク
・重量物輸送技術
・プラント建設力
港湾での荷役作業から国際物流まで総合的なサービスを展開。重量物輸送・据付分野のパイオニアとして、港湾インフラ整備に必要な大型機械の搬入・設置で高い技術力を発揮。物流と機工の両事業を持つ強みで、港湾施設の建設から運用まで一貫対応が可能。
住友重機械工業(7017)

住友重機械工業(7017)は総合重機メーカーで、港湾クレーン・浚渫機械・エンジニアリング機器などを提供します。国内外のインフラ案件の機械需要に支えられるポジションにあります。重機需要の底堅さや設備更新需要、海外インフラ投資の好機と結びつき、中長期的な成長余地を期待できる点が投資妙味です。
・コンテナクレーン製造
・港湾荷役機械
・クローラクレーン
港湾の基幹設備であるコンテナクレーンを1968年以来、国内外で累計440台以上納入。港湾荷役に不可欠な各種クレーンや連続アンローダーなど、港湾設備の設計・製造で高い技術力を保有。建設用クローラクレーンも港湾工事現場で活躍し、港湾インフラ整備を設備面から支える。
明電舎(6508)

明電舎(6508)はインフラ設備・電力機器を手掛ける企業で、水処理や電力供給、社会インフラ向けシステムを提供します。港湾施設では電気・制御設備、環境関連インフラ需要が成長領域です。国のインフラ更改投資や環境規制強化に応じた需要が追い風になり、中長期的な収益基盤を支える可能性が投資妙味です。
・電力インフラ技術
・監視制御システム
・上下水道設備
港湾施設に不可欠な電力供給システム、監視制御設備を提供。変電・配電システムで港湾の安定稼働を支える。上下水道プラントの設計・製造・施工から運営・維持管理まで対応し、港湾地域の総合的なインフラ整備に貢献。再生可能エネルギー関連技術も保有。
東洋建設(1890)

東洋建設(1890)は海洋・交通インフラを含む総合建設企業で、港湾整備・海岸工事も主要分野です。老朽インフラ更新投資や災害対応案件の増加は追い風で、幅広い土木案件を抱えるため安定受注が期待できます。社会インフラ再構築の潮流を背景に、中長期での収益拡大を見込める点が投資妙味です。
・海上土木大手
・港湾・漁港整備
・空港建設実績
海洋土木における豊富な施工実績と技術力を保有。港湾・漁港・海岸の整備で高い競争優位性を持ち、官庁海洋工事における大型プロジェクトの受注に強み。空港建設でも多数の実績があり、海上・臨海部の総合的なインフラ整備を担う。
若築建設(1888)

若築建設(1888)は中堅の海洋土木・港湾工事企業で、港湾護岸・堤防、水門など幅広いインフラ工事に対応します。利益改善が最近顕著で、特に港湾・防災関連工事での受注増が見られ、成長期待が高まっています。規模は大手に比べ小さいものの、専門性の高さが評価される投資妙味です。
・浚渫技術
・埋立工事
・洋上風力対応
港湾整備に不可欠な浚渫工事で高度な技術を保有。埋立から海洋土木全般まで対応可能な総合力を持ち、防衛関連の港湾整備工事でも実績。浮体式洋上風力発電の建設技術開発に参画し、港湾の新たな役割拡大に貢献。
不動テトラ(1813)

不動テトラ(1813)はコンクリート製品・消波ブロックで港湾・海岸保全に強みを持つ企業です。自然災害対策や港湾護岸整備需要は長期的なテーマであり、防災・社会インフラ関連の安定需要が収益の基盤になります。耐久性資材の供給役として収益の安定性が投資妙味です。
・消波ブロック最大手
・地盤改良技術
・護岸工事専門性
港湾整備に不可欠な消波ブロックで国内最大手。防波堤や護岸の建設で高い技術力を発揮し、波浪から港湾施設を守る重要な役割を担う。地盤改良工事でも首位級の実績を持ち、軟弱地盤の多い港湾地域での基礎工事に強み。独自工法により高品質な施工を実現。
三井E&Sホールディングス(7003)

三井E&Sホールディングス(7003)は舶用推進システムや港湾クレーンを手がける重機・機械系企業です。港湾インフラ機器の需要に加え、造船・推進システムの成長期待もあり、船舶・物流インフラ関連のシナジーが魅力です。海外案件や設備更新の追い風を受け、機器セグメントの成長余地が投資妙味となります。
・港湾クレーン国内首位
・ゼロエミッション技術
・ターミナル管理システム
港湾クレーンで国内トップシェアを持ち、1967年に日本初のコンテナ用岸壁クレーンを納入して以来の実績を誇る。水素駆動クレーンや遠隔・自動化クレーンなど次世代技術の開発をリード。自社開発のターミナル管理システム(CTMS)でハード・ソフト両面から港湾運営を最適化。米国市場での展開も強化中。
まとめ|港湾整備関連10社を業界別に整理すると見えてくる投資戦略
港湾整備関連株の本質は、「単一テーマではない」という点にある。
海洋土木、物流、重機、インフラ資材——それぞれが異なる役割を担いながら、日本の港湾機能を支えている。
ここで、先に挙げた10社を業界別に整理してみよう。
■① 海洋土木・マリコン(港湾工事の中核)
・五洋建設
・東亜建設工業
・東洋建設
・若築建設
これらは、岸壁整備・浚渫・護岸工事など、港湾そのものを造る企業群である。
国土強靭化や防災対策の直接的な恩恵を受けやすく、「公共投資の本丸」といえる存在だ。受注残や利益率の改善局面では株価の弾力性も高く、テーマ性が最も分かりやすい。
■② 港湾物流・運送(機能強化の受益者)
・上組
・山九
港が整備されれば、物流効率が上がり、取扱量も増える。
彼らは港湾整備の“間接受益銘柄”である。景気耐性が比較的高く、配当や財務安定性を重視する投資家に向くセクターだ。
■③ 重機・港湾設備(設備投資の波に乗る)
・住友重機械工業
・三井E&S
港湾クレーンや大型機械は、インフラ更新時に必ず必要になる。
自動化ターミナルや海外案件も視野に入り、グローバル展開による成長余地がある。為替や設備投資循環の影響は受けやすいが、拡張局面では大きく伸びる可能性がある。
■④ インフラ資材・防災関連(安定需要)
・不動テトラ
・明電舎
消波ブロック、電力設備、制御システムなど、港湾の“縁の下”を支える企業群である。
防災・更新需要は長期的に続くテーマであり、比較的安定収益型の銘柄といえる。
■投資戦略のヒント
・公共投資拡大局面で狙うなら「マリコン」
・安定性重視なら「物流」
・成長余地を取りに行くなら「重機・設備」
・防災テーマで堅実に構えるなら「資材・インフラ」
港湾整備は、“一過性の材料株”ではない。
日本が島国である限り、港湾は国家の生命線であり続ける。
だからこそ重要なのは、
「どの立ち位置の企業を選ぶか」という視点である。
テーマを俯瞰し、業界構造を理解することで、港湾整備関連株は単なる思惑銘柄ではなく、戦略的な投資対象へと変わる。
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