近年、世界的な物流需要の回復や環境規制への対応、防衛分野の拡大などを背景に、日本の造船業界は再び注目を集めています。とりわけ、LNG船や自動車運搬船、省エネ技術を搭載した次世代船の需要が高まり、株式市場でも造船関連銘柄に投資妙味が広がっています。
本記事では、造船業界の最新動向を踏まえながら、日本国内で注目される造船関連銘柄を厳選して紹介します。投資の参考に、ぜひ最後までご覧ください。
日本の造船関連株が注目される理由と市場動向

近年、日本の造船業界は国内外の物流需要の回復や環境規制強化、防衛関連の需要拡大を背景に、再び注目を集めています。特にLNG運搬船や自動車運搬船、省エネ技術を搭載した次世代船の需要が高まり、国内の造船関連株も投資家の関心を集めています。
造船関連株には、造船そのものを手掛ける企業だけでなく、海運大手や造船向け鋼材・部材を提供する企業も含まれます。海運会社は自社船の建造・運航を通じて造船需要を支え、サプライチェーン上の鋼材メーカーや装備メーカーも間接的に恩恵を受ける構造です。
さらに、世界的な脱炭素化や再生可能エネルギーへの移行が進む中、次世代燃料対応船の開発や省エネ設計が重要になっています。これにより、単なる船舶建造だけでなく、技術力やエネルギー関連事業を持つ造船関連株が中長期的に成長する可能性が高まっています。
投資家にとっては、安定した受注を持つ防衛関連艦艇や、LNG船・特殊貨物船などの需要動向を押さえつつ、各企業の技術力や市場シェアを評価することが重要です。本記事では、こうした市場環境を踏まえ、日本国内で注目される造船関連株10社を詳しく解説していきます。
日本郵船(9101)

日本郵船は国内最大手の海運会社で、造船会社との関係が深く、自社で大型コンテナ船やLNG船の開発・導入を積極的に行っています。ESG投資の流れを受けて環境対応型船舶の保有・運用を進めている点が特徴です。投資妙味は、世界的な物流需要の増加による安定した収益と、燃料転換による次世代船舶への投資が評価される点です。株価は市況に左右されやすいものの、造船業界全体の発展に直結する立ち位置にあり、海運と造船の両面から注目度が高い銘柄です。
世界最大級の海運会社として船舶技術開発をリード。環境配慮型船舶の開発、自動運航技術、デジタル技術活用による運航効率化を推進。2017年に商船三井・川崎汽船と共同でONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)を設立し、コンテナ船事業を統合。
商船三井(9104)

商船三井は日本郵船と並ぶ大手海運会社で、LNG運搬船や自動車運搬船の分野で世界的なシェアを持ちます。造船所と連携して次世代燃料対応船の導入を進めており、環境規制への適応力が強みです。投資妙味は、海運市況の回復による安定収益に加え、水素やアンモニア燃料といった新エネルギー輸送インフラを早期に取り込もうとしている点です。造船株そのものではありませんが、需要サイドから造船需要を押し上げる存在であり、中長期的に成長が期待される関連銘柄です。
LNG船輸送で世界トップクラスのシェアを持ち、海洋エネルギー開発分野に強み。環境技術では次世代燃料船の開発を積極推進。造船技術面では省エネ・環境配慮型船舶の技術開発をリードし、自動運航技術やデジタル化による効率向上に注力。
川崎汽船(9107)

川崎汽船は「K LINE」のブランドで知られる大手海運会社です。自動車運搬船やバルク船を中心に世界的に事業を展開し、脱炭素化対応を加速させています。投資妙味は、環境対応型の次世代船への投資や海運需要の回復による業績改善です。また、同社は洋上風力関連の物流や新燃料輸送の取り組みも強化しており、造船需要を後押しする立ち位置にあります。株価は海運市況に連動する側面が強いですが、脱炭素と物流拡大の両面で造船関連株として注目度が高い銘柄です。
ドライバルク輸送で高い技術力を持ち、大型ばら積み船の効率的運航技術を保有。環境対応船舶の開発では、アンモニア燃料船や水素船などの次世代燃料技術開発に積極投資。デジタル技術を活用した運航最適化システムの開発も推進。
名村造船所(7014)

名村造船所は中大型船舶の建造で実績を持つ老舗造船会社です。LNG船や自動車運搬船を手掛け、アジア市場を中心に国際的な展開を行っています。過去には経営再建の課題もありましたが、近年は環境対応船の需要取り込みに注力し、業績改善が進んでいます。投資妙味は、ESG対応を進める海運会社からの新造船需要の高まりと、収益体質改善による黒字化基調です。株価は変動しやすいものの、再成長期にある造船株として注目されています。
100年を超える造船技術の蓄積により、高品質なばら積み船・タンカーの建造技術を保有。環境配慮型船舶の開発では省エネ技術に強みを持ち、燃費効率の良い船体設計技術を有している。中型船舶に特化した柔軟な生産体制が特徴。
三井E&S(7003)

三井E&Sは長い歴史を持つ造船大手で、近年は環境対応型の船舶エンジンや洋上風力関連設備など新領域に注力しています。従来の造船事業に加え、再生可能エネルギーや海洋インフラ事業を強化している点が特徴です。投資妙味としては、世界的な脱炭素需要に合わせた省エネエンジンの需要拡大や、防衛関連装備品の需要増が挙げられます。特に国策分野であるエネルギー安全保障や海上防衛に関連する案件に食い込める点は中長期の成長余地が大きいと見られ、株価の安定性と将来性を兼ね備えた銘柄です。
100年を超える造船技術をベースとしたエンジニアリング企業として、船舶用ディーゼルエンジンで世界トップクラスのシェア。環境技術では次世代燃料エンジン開発をリードし、自律操船技術やデジタル化による船舶の高度化技術を保有。
NSユナイテッド海運(9110)

NSユナイテッド海運はLNG船やばら積み貨物船の運航で知られる中堅海運会社です。自社船の建造・運航管理に強みを持ち、環境規制対応にも積極的です。投資妙味は、LNG需要の増加や省エネ船の導入による収益安定性です。中堅ならではの柔軟な経営判断と国際物流市場への対応力により、造船・海運関連の中長期投資先として注目されます。
エネルギー輸送船舶の運航ノウハウを活かした船舶仕様の最適化技術。タンカー・LPG船の安全運航技術と環境対応技術に強み。次世代エネルギー輸送船舶の開発では、水素・アンモニア輸送船の技術開発に参画。
飯野海運(9119)

飯野海運は自動車運搬船とバルク船を中心に事業を展開する海運会社です。自社船建造によるコスト管理能力が高く、安定した収益基盤を持ちます。投資妙味としては、物流需要の増加に伴う船舶稼働率向上や、省エネ船の導入による競争力強化です。市場規模は大手ほど大きくないものの、造船需要を支える中堅として注目されます。
ばら積み船運航における豊富な経験と技術ノウハウ。船舶の燃費効率向上技術と安全運航システムに強み。環境対応では省エネ船舶技術の開発を推進し、デジタル技術を活用した運航最適化システムの構築に取り組んでいる。
玉井商船(9127)

玉井商船はばら積み貨物船とタンカーを中心に運航する海運会社で、特殊貨物輸送にも対応しています。小規模ながら自社船建造に取り組み、環境対応型船舶の導入も進めています。投資妙味は、限定的な市場での高い稼働率と、省エネ船導入によるコスト削減・競争力向上です。ニッチ市場で安定収益を確保する中堅海運株として注目されます。
専用船・特殊船舶の運航技術に特化した専門性。液体・粉体貨物の安全輸送技術と船舶設計ノウハウ。内航・外航両方の運航経験を活かした効率的な船舶仕様の提案力。環境対応では省エネ船舶技術の導入を積極推進。
共栄タンカー(9130)

共栄タンカーは主に原油・石油製品輸送に特化したタンカー運航会社です。自社建造のタンカーによる運航管理で効率化を図っており、安定収益が期待できます。投資妙味は、原油輸送需要の堅調さと、自社船建造によるコスト管理力の高さです。造船需要にも影響を与えるタンカー保有・建造の立場から、専門性の高い造船関連株として注目されます。
タンカー専門運航による豊富な安全技術とノウハウ。石油製品輸送の安全基準を満たす高度な船舶管理技術。環境保護技術では二重船殻タンカーの運用技術に強み。デジタル技術を活用した効率的な配船システムと運航管理技術を保有。
三井金属鉱業(5706)

三井金属鉱業は造船そのものではなく、造船向け鋼材や特殊金属部材を供給する企業です。造船業界向けの高品質鋼材の需要が安定しており、特に大型船舶やLNG船向けの受注が増加しています。投資妙味は、造船市況に連動した鋼材需要と、海外市場拡大による中長期的成長です。造船関連のサプライチェーン上で重要な役割を担うため、間接的に造船株として注目されます。
船舶用銅合金製品(プロペラ、シャフト等)の製造技術。海水に対する耐食性に優れた船舶用特殊合金の開発・製造技術を保有。電子材料事業では船舶の電子機器用高性能材料を供給。金属加工技術を活かした船舶部品の精密製造技術。
まとめ|日本の造船関連株10社の業界別整理と投資ポイント
近年の造船業界の注目株を整理すると、大きく「造船・エンジンメーカー」「海運大手」「中堅海運・特殊船」「関連資材・サプライチェーン」の4つのカテゴリーに分けられます。
まず、造船・エンジンメーカーには三井E&S(7003)や川崎重工業(7012)が挙げられます。これらはLNG船や自動車運搬船、防衛艦艇の建造で高い技術力を持ち、次世代燃料船の開発も進めており、中長期的な成長性が期待されます。
次に、海運大手としては日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107)があり、自社船建造を通じて造船需要を直接支える立場です。世界的な物流需要や脱炭素化に対応する船舶への投資が株価の成長要因となります。
中堅海運・特殊船カテゴリーには、NSユナイテッド海運(9110)、飯野海運(9119)、玉井商船(9127)、共栄タンカー(9130)が属します。これらは小規模ながら自社建造船や特殊貨物船に強みを持ち、ニッチ市場で安定した収益を確保しています。環境対応型船導入による競争力強化も投資妙味の一つです。
最後に、関連資材・サプライチェーンとして三井金属鉱業(5706)が挙げられます。造船向け鋼材・部材の供給を通じて、造船市場の成長恩恵を受ける銘柄で、安定した需要と海外市場拡大の期待から中長期的投資先として注目されます。
このように、造船関連株は単なる建造企業だけでなく、海運会社や資材供給企業も含めた広い視点で分析することが重要です。それぞれの強みや市場ポジションを理解することで、投資家は短期的な市況変動だけでなく、中長期的な成長可能性を見据えた投資判断が可能になります。
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